ざっくり西洋哲学史

今回は哲学の歴史の流れをかんたんに追ってみます。 哲学とはもともとその時代時代に応じ答えの出ない課題に対し考えを巡らすものですから、時代の常識が変わるように哲学の思想も変わって行きます。ただし古い考えが間違っていると安易にいうことはできず、現代社会にも受け継がれているものや応用できるものがあります。

古代ギリシャ哲学

哲学の黎明期となるこの時代、奴隷制度の発達したアテネでは人口の1/3が奴隷でした。奴隷に対して市民には貴族と平民がいましたが大きな格差はなく民主政治の基礎が固まる時代でした。比較的自由な市民生活からギリシャ文化が発達するのですが、これまでの神話による自然現象の解釈に変わって合理的な解釈が発展します。また市民の政治への参加とともに弁論法が求められソフィストという職業が発達します。そういった時代背景に登場するのがソクラテスです。
彼は弁論法で表面的に語られる内容に反して問答法、無知の知という知に対し謙虚な姿勢により真理を探求しました。またソクラテスは著書を残さなかったが弟子であるプラトンがまとめます。またプラトン自身はイデア(存在論=物事にはそれを決定付ける本質(イデア)が存在する)を唱えます。さらにその弟子であるアリストテレスはイデアを批判し、物事はイデアによって決まるのでなく物事そのものに意味があると唱えます。アリストテレスは幅広い学問に精通し「万学の祖」とも言われ、また中庸(何事もほどほどが大事)を重視しました。

中世哲学

中世哲学は神との関係(神の存在に対しての哲学的理解、信仰と理性の調和)の中で論じられます。この時代キリスト教は生まれて間もない時代です。他の宗教に対し考えを確立させる必要があったのです。
アウグスティヌスは一時期マニ教を信仰していましたが哲学によりマニ教から離れます。そしてキリスト教に改心しキリスト教での教義に哲学を当てはめていき、罪の存在に対し自由意志によるものという理解をします。 さらに時代は進むとトマス・アクィナスがキリスト教の教義とアリストテレスの思想を結びつけて行きます。

近代哲学

この時代は中世で神を中心に考えられてきた物事に対し、その前提を疑う流れが出始めます。
ベーコンはこの時代では当たり前であった神を中心とし自然現象を語ることを批判し、経験による正しさの追求をします。また思い込みや偏見を「イドラ(偶像)」と呼びこれも正しさを見えなくするものとしました。帰納法を生み出したことでも知られます。
デカルトはベーコンとは違うアプローチとして論理的な正しさを重視します。またあらゆるものを疑う「方法的懐疑」により自身の存在を考え抜いた結果「我思う、ゆえに我あり」(全ての存在は疑うことができるが、この疑いという考えを持ついまの自分自身の存在は疑いようがない)にたどり着きます。心身二元論では「体は意識によって動かされている道具」とします。また演繹法を生み出したことでも知られます。
カントは定言命法において「正しい行いは理由なく行うべき」人間的な理性ある行動をよしとしました。のちのドイツ観念論とは反する思想でしたが最終的にはドイツ観念論の論議を生み出したという意味でドイツ観念論の祖とされます。

現代思想

この時代になると近代での神の議論から離れてより現実社会に近しいことへと対象が移っていきます。キリスト教が身近ではない日本人にとっては理解しやすいということもあるかと思います。
主な思想としては現象学、実存主義、構造主義、反ナチス、ポスト構造主義などがあります。 現象学ではフッサールなどが古代ギリシャから続く存在、認識に対し新たな捉え方をしました。
実存主義の先駆けとなるのがキルケゴール。彼は絶望の中から自らが人生を切り開く必要性、主体性を見いだします。ニーチェの「神は死んだ」という有名な言葉もあります。サルトルの「実存は本質に先立つ」(実存(意思)は本質(運命)より先にある=運命(本質)を自分の意思(実存)で変えられる)という考えもあります。ハイデガーは死を意識することにより人生の意思決定の必要性を考えます。 構造主義の旗手としてレヴィ=ストロースがあげられます。彼は実存主義で掲げる人間の意思なるものは文明社会の限定的な考え方であるとその思想を批判します。

最初に述べたとおり、時代時代によって哲学思想は変わります。では現代において価値観の変革の最中にあるものはなんでしょうか? 例えば「資本主義の限界」「ジェンダーレス」「AIの進歩と人間の意思」「いまだに変化し続ける情報社会」「コロナ禍」など、これらによって常識が変わり、新たな哲学思想が生み出されていくのだと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました